シルバー人材「天下り」

 先日、友人から「シルバー人材センター」でかなりいい給与(約21万円)で職員を募集していたので応募してみたが、どうもそこは行政の「天下り先」で、とんだ無駄足を踏んでしまった、と憤慨とも落胆とも取れる話を聞かされた。

 なるほど、シルバー人材はやはり「天下り先」かと何となく合点がいった。役所の職員の天下りは今に始まったことではなく昔から取りざたされていたが、こんな就職難の世の中で役所の不正行為が大いに活用されているのは誰もがガテンがいかないだろう。そもそも一般事務職に21万円の給与は、ちょっと考えられない破格の待遇だった。やはりこれはどうみても常識的におかしい。

 シルバー人材は厚労省の末端機関。表向きは、たとえば○○市公益社団法人として独立した組織で社員は団体職員という形を取っている。ありていに言えば、その実態はお役所に近い組織なのだ。ここに「天下り先」としての癒着構造がある。
 
 今回友人が応募した職種は「一般事務」。採用枠2人に50人余りが応募したという。応募から10日余りで不採用の通知が来たという。A4サイズの大きな封筒にA4サイズ1枚の簡単な不採用の通知と送った履歴書が同封されていた。

 友人は、どんな基準で採否を決定したのだろうと疑問を持ち、インターネットの検索サイトに「シルバー人材センター 天下り」とキーワードを入れてみると、それらしき情報が数十件ヒットしたという。○○県須賀川市の市議のブログには、やはりシルバー人材は市職員の天下り先といわれても仕方がない、として次のような説明があったという。

 「シルバー人材の理事長、事務局長は、元市職員(幹部)が就任している。一般職員は一応は公募の形を取ってはいるものの、事実上は行政上がりの人間が就任しているらしい」。民間は仕事が無いのに、行政の職員には天下りのルートが厳然と存在るこの不条理。安酒をあおりながら友人はこの何ともやるせない思いを私にぶつけた。

 最初から結果が分かっているにもかかわらず、いけしゃあしゃあと公募の形を取って何も知らずに応募した人たちをペテンにかけているのである。こんなことが許されていいはずはない。これはいち地方の自治体の慣習では済まされることではない。多かれ少なかれ、ほぼ全国の自治体で行われているに違いない。こんなことが長年の慣習?として野放し状態で行われているのだ。

 A・M・Yのいわゆる大手新聞社は、中央官庁の天下りはたまに追いかけるものの、末端の組織の不正には触手はほとんど伸ばさないが、大も小もない、天下り天下りなのだ。ほかの事件事故で忙しいと、言い訳がましいことは言わないでほしい。地方支局の方々に是非頑張っていただきたいものだ。地方行政となあなあの関係の地方紙はあまり当てにならないからだ。

 大手新聞社はやろうと思えば独自に調査報道で不正を暴くことはできるだろう。地方自治体の天下り先はシルバー人材だけではないが、市長・町長・村長や地方議員の方々の正義感を当てにできない以上、まずはどこからでもいい、早急に大手新聞社の力で地方行政組織の天下りの実態を暴いてほしい。就職難であえいでいる庶民の切なる願いである。

追伸:どうやら天下りはシルバー人材に限ったことではなく、ほかの行政関連組織・機関にも広く及んでいるようだ。体験者からの情報では、各市町の公立図書館では、給与の額によって一般と天下りに分けて職員を採用しているという。一般採用枠の給与を低く抑えて、天下りの給与を高めに設定しているという。結構露骨に天下りを公表しているかにみえる。公立図書館は、ほとんどの自治体で指定管理者制度(入札による5年契約)を採用して、民間企業が管理・運営している。表向きは民間主導だが、実態は地方自治体の管理下に置かれている。つまり業者と自治体の癒着構造が形成され、天下りの温床となっているのだ。世知辛い世の中、情実や縁故、官民癒着などが蔓延るのは世の習いなのか。いやいやそんな不条理は許せない。

「世の中は浮きつ沈みつ長良川」