実にタイムリーな出版

「マスコミ各紙にはSTAP細胞の真相をとことん解明してもらいたい」(1月6日の同欄)とぼやいていたら、その次の日の1月7日、何と『捏造の科学者 STAP細胞事件』という本が出た。実にタイムリー、そして最適役による検証ドキュメンタリーである。やはり思いは通じるもの。してやったり、と朝から爽快感を味わった。

毎日新聞科学環境部の須田桃子記者による力作だ。四六判、384ページ。科学史に残るスキャンダル事件を、端緒から事件の流れに沿って章立てされていて分かりやすくまとめられているようだ(なにせ昨日の今日なのでまだ買って読んでいない)。

STAP論文発表後から次々に疑義が呈され、論文の根拠が崩されていく経緯や、研究チームの主要メンバーが在籍した理化学研究所の後手に回った対応などを克明に描いている(出版社のライナーノート)。

それにしても適役である。問題が発覚した当初から会見の場での須田さんの関係者への質問には一目置いていた。いつも的確な的を得た質問だからだ。事実を知りたいというひたむきさも感じられた。会見の次の日の毎日新聞には、質・量ともに他社を凌ぐ読み応えのある記事が掲載されていた。毎日の科学記事は他社を圧倒しているものが多い。これは決してひいき目ではないのだ。毎日のホームページをご覧になればSTAP細胞に関する報道は群を抜いていることが一目瞭然だ。

それとは引き換えに、日○サイエンスとかいうところの女性記者や自称、医療ジャーナリストと称する女性(女性を差別視しているわけではなく特に目に余る態度だったので記してみた。ふてぶてしい態度で何様のつもりかと思う男性中年記者らしきものも多々いた)などは、いずれにしろ泥縄式で習い覚えた細胞生物学のテクニカルタームを振り回して、あまり重要とは思えない質問をしつこく繰り返していたのには全く興ざめさせられた。会見には毎回百数十人のマスコミ陣などが詰めかけていたので、玉石混淆なのでしょうね。これはこれで毎回面白く観させていただいた。

繰り返すが、今回の須田記者の本は時宜を得た出版だ。STAP細胞が完全否定されるのを待っていたかのように、間髪を入れずに検証本がでるなんて一昔前までは考えられなかった。これも須田記者の丹念な取材活動の結果なのだろう。本人ならずとも快哉を叫びたい。溜飲が下がる思いだ。