今年もまた1年が始まる

昨年はいろいろ大変な年でした。そのいろいろなことを引きずって今年もまた1年が始まりました。そんな年を展望する念頭にふさわしい一冊を紹介します。

昨年末あたりから新聞各紙の書評で取り上げられているトマ・ピケティ『21世紀の資本』(みすず書房)。

資本主義社会では必然的に格差社会が広がる、ということを歴史的に統計資料などを駆使して明らかにし、富裕層への課税を増やすことを提案している。つまり累進課税のシステムを再構築することを提案しているようです。しごく当然。

私はこの本を年末に図書館で借りた。まだ読み終えてはいないので、ここでは本筋とは逸れるのですが、市立図書館でこの本を借りた前後のいきさつなどを話してみたい。

自宅のPCで、どこの公立図書館がこの本を所蔵しているのかを検索したところ、当然あるだろうと思っていた県立図書館には無く、10万そこそこの人口の、ある市の図書館一館にだけ所蔵されているという意外な結果が出た。

「へえ〜そんなもんかなぁー」「図書館司書らの関心度はイマイチだなぁ」。司書らの大半はおばさんたち(失礼)なので、『純粋経済学』にはあまり関心がないのだろう。家計を預かる『台所経済学』には精通していても、やはりこの手のものは苦手なのかもしれない。

一冊だけ所蔵されているある市までは、私の住んでいるところから少し遠いので、比較的近くの図書館にその本を取り寄せてもらうことにした。著者、署名、出版社など必要事項を書き添えて窓口に提出すると、手続きが年末だったので、本が届くのは年明けの10日過ぎごろになるという。

その司書は「市に蔵書がないので購入するかどうか市の担当の社会教育課に伺いを出したり、年末年始の休日も含むのでそれぐらいの日時がかかってしまう」という。

私は単に他市の市立図書館に所蔵されているその本を取り寄せていただく手続きをお願いしたつもりでいたのだが、どうやらこの図書館でも購入するかどうか検討するというのだ。購入するかどうかを検討するのは図書館側の事情に属する事柄で、もとより私にはあずかり知らぬ事。何か話があらぬ方向に向かっていた。

この図書館では、従来の市立図書館から民活(指定管理者制度)を取り入れて効率性とサービス向上を図っているという。が、図書館システムそのものは何ら変わっていない。明らかだった。管理・運営は民間業者が請け負っているのだが、すべての面で行政に伺いを立てなければ事が進まない旧態依然のそれなのだ。

当然、すべての面で監督する担当行政課に書類を通さなければ事が運ばないので、あらゆる個所でタイムラグが生じる。つまり、従来よりも利用者サービスが遅滞している。所詮は営利を目的とした民間企業なのである。従来の図書館システムに乗った管理・運営方式では根本的な無理がある。効率化やサービス向上は実は画餅なのだ。

私がとやかく言ってもシステムが好転するとは思えないが、ソフト事業である図書館の運営・管理は、所詮は民間企業には任せておけない社会教育分野なのだ。財政難の行政にとって民活を取り入れて図書館の事業費を減らすのは結構だが、だれのための事業なのか、今一度抜本的な問題から再構築してみてはいかがか。

まずは、カウンターの周りにずらりと並んだ各種チラシやパンフレットなどを少し減らしてみたらどうだろう。あまりいらないものに印刷代(意外とばかにならない)にお金をかけることはない。ちょっとした広告なども取り入れているようだがあまり効果があるとは思えない。本来営利を目的とする事業ではないので広告といっても、たかがしれたものだ。年度末ごろ、蔵書整理を兼ねた有料の「ブックリサイクル」を開いているが、中には高価な本や一度も読まれなかったと思しき本もリサイクルに出されており、つくづく税金の無駄遣いをしていると思わされる。支出フローをもう一度、見直す必要がある。

今回のことで一つ分かったことは、直感的ではあるが、県立図書館も各地の市立図書館も司書のレベルには実はさほどの大差はなく、個々の司書の見識というか常識力によって各館は運営されているということだ。

その後、『21世紀の資本』は県内各図書館に次々と所蔵されていった。図書館必携の一冊であることが新聞各紙の書評などにより遅まきながら浸透していった結果なのだろう。まあ、私も10日過ぎを待たずにこの本を借りることができた。さて、読み進めることにしよう。