原発報道 3紙の姿勢

  先月末、世界保健機関(WHO)は、東京電力福島第一原発事故による放射性物質被曝の健康リスク評価を公表したが、これを報道した大手新聞三社の主見出しのトーンが微妙に食い違っていたのが興味深かった。

  A紙は「最大の被災地でがん発症リスク高い―甲状腺がんリスク増加も」との見出しが躍る。Y紙は「がん患者増の可能性低い」と抑え気味。M紙は「がん増加の可能性小さく―作業員は一部高リスク」と、三者三様の報道姿勢を示していた。

  客観報道を旨とするはずの新聞各社のこの違いは何を意味するのであろうか? それは自ずと各社の立ち位置を示しているといえるが、ここで気をつけなければならないのは、どの社の記事を読むかで我々の判断が左右されかねないということだ。うがった見方をすれば、新聞各社は必ずしもニュースソースを忠実に報道しているわけではなく、フォーカスに微妙な差異があるからだ。

  そう考えると、納得できる事実を知りたければ、私たち自身がプレスリリースまで遡って、一次資料に目を通したうえで広く内外の他の報道メディアなども参考にしたうえで、自分自身の理性・常識に照らして理解・判断するしかない。

  事ほど左様に、一つの客観的な出来事・事実でさえも、それを報道する側や最終的に受け取る個々人の側の姿勢で、事実とされるものが右に触れたり左寄りに振れたりしてしまう。新聞各社は企業であるから、そこには当然のように各社の「意思(思惑)」も入り込むであろうから、事は複雑になる。

  話がちょっと脇道にそれたが、今回のWHOの報告は潜在的な健康に対する影響の分析として注目されるデータを提供している。東日本大震災からあす11日で丸2年。原発事故後の問題点を今後も注視していきたい。

  PS: 比較に使った三紙の見出しは、各社のHPの記事から抜き出したものです。
    WHOの報告については、改めて報告してみたいと思います。