koujinのつぶやき その9

 先日、とある町の大型スーパーの飲食コーナーで、親子のとても微笑ましい光景を目にした。

 小学校低学年ぐらいであろうか、女の子がひとりでテーブルに置かれたラーメンの丼から、なんともぎこちない箸遣いで用意した白い小鉢にラーメンとスープを小分けしていた。

 ひとりで一生懸命に何をしているのだろう、と最初のうちはその行為が何だか良く分からなかったが、そうこうするうちに女の子のテーブル席に母親がやってきた。ともに言葉少なにほほ笑みを交わしながら、女の子は大きな丼を抱え込んで、母親は小鉢から、差し向かえでそれぞれのラーメンを食べ始めた。

 こっちは通路を挟んで筋向かえのテーブルから注文した天ぷらうどんが出来るまでの間、そんな親子の様子を見るともなく見ていた。うどんが出来上がり、さっそくフゥーハァ、フゥーハァ、とかき込んでいると、いつの間にかその親子はテーブルを後にしていた。

 まったく静かな親子だった。ラーメンを食べている間は、ほとんど会話らしきものはなかった。親子で食を分け合って食べるところに何か気脈のようなものが通じ合うのだろう。静かに食を共にすることですべてが満たされていたのかもしれない。温かい食事は人の心を和ませるんだなぁ、と勝手に想像をたくましくした。

 それはほんの10分たらずの出来事だった。どこにでもある日常的な光景といえばそうだろう。でも、その日の私にとってはセピア色の原風景のような懐かしい光景にさえ映った。ほのぼのとした親子のぬくもりが確かに感じられた。一杯の天ぷらうどんで心まで温かくなった。ごちそうさま。