夏の古本まつりに行く

 








 
 

 
 盆入りの8月13日、例によって友人と古本屋(新古書店を含む)巡りのドライブに出かけた。今回は、千葉県柏市のデパートで開かれている「夏の古本まつり」をメーンに、まあ、あちこち行ってみよう、といういつもながらの気まま旅。午前中は曇り空だったが、昼ごろから入道雲がむくむくと頭をもたげて真夏の陽気。けっこういい汗をかきながら、ブックハンティングを楽しんだ。

 新4号国道を南下。国道50号に左折する道を間違えて、かなりのオーバーハング。午前8時半ごろ出発して、目的の柏市のデパートへは昼ごろ到着した。さっそく街並みが鳥瞰できるスケルトンのエレベーター(三菱製)に乗り込み10階催事場へ。パンフレットによると、今回の「○○○○夏の古本まつり」は初の開催。古本をはじめLPレコード、EPレコード、CD、DVDなどがワンフロア―にずらりと並んでいた。

 出店した古書肆は東京(7)、千葉(2)、福島、栃木の計11店とプラス出張一箱古本マーケット13店。レコード&CD店は近郷近在の5店が出店した。前回紹介したつくばのデパートでの古書市に比べてこちらの方が品ぞろえがあかぬけた感じだった。とはいえ、この手のイベントに出店する古本屋はほとんどが人文・社会科学系なので、私が求めている自然科学系の古本はほとんど無きに等しかった。

 が、ある古書肆は原発関係の単行本を70センチぐらいの幅で並べていた。なかなか筋のいい品ぞろえで、前回のつくばの古本市で10,000円という法外な値の付いた同じ古本が、ここではまあまあ妥当な値の700円で出ていた。つくばで10,000円と値を付けた古書肆は、今思うとほとんど業界の仁義を心得ない素人業者だったような気がする。

 そうこうするうちに、奥まった棚の隅に『林達夫著作集』全6巻(平凡社)を発見。値段を見ると1050円。「えぇ〜」。思わず心の中で快哉を上げた。まあ経年変化でかなり箱は焼けていたが、中身はちょっとカビ臭いだけでまずまずの状態。これは安いと買い求めた。
 
 ちょっと一般向けではないが『稲垣足穂大全』全6巻(現代思潮社)が10,000円ででていたのには少し驚いた。一昔前はこの3倍ぐらいが相場だったのに…。熱烈なファンは今でもいるかとは思うが、世間の評価は移り変わっているのだろう。そんな、古本相場の一端を垣間見ることもでき、いろいろと目の保養にもなった古本まつりだった。

 蛇足を付け加えるとLP、CDの売り場は心なしか閑古鳥状態。ちょっと値段の付け方が渋すぎたようだ。重い思いをしてせっかく運んだLPレコードをまたそのまま持ちかえるのは一苦労だと思うのだが、どこまで強気の商売が続けられるのか行く末を見守りたいたい。

 2時間余りを費やした古本まつり会場を後にして、お昼をいただくことにした。今回も回転ずし店でいただくことにした。混雑時を少し過ぎていたので、即、ボックス席に着くことができた。健康を考えてイワシ・アジ・サケ・マグロ・モロキューなどを注文した。それにしても、ネタの大きさに比べて、シャリ(酢が足りない)の量が何と少ないことか。なんとも呆れた量だが、粉末のお茶とハリの無いガリをどっさり取って、仕方がなくおとなしくいただいた。出されたものを文句も言わず黙々と食べる。これではまるで家畜ではないか? ファストフードはすべからく自己家畜化を助長するようだ。とはいえ、便利さゆえ、ついつい利用してしまう。いや、利用させられてしまう。ファストフードと自己家畜化プラスαについては、資料を集めてそのうちに書いてみたいと思っている。

 次に向かった先は、北関東最大の売り場面積という新古書店。ここは新古書の量はかなりのものだが、質が伴わない。開店当時はそこそこ良かったのだが、訪れるたびに買う本が少なくなってくる。どうもコンスタントに入れ替えが出来ていないのではないか。つまり棚が動かない状態なのだ。それでも、今回はC・G・Jung の DreamsとFour Archetypes(いずれもRoutledge)をゲットした。もう一冊 Jung の Flyng saucer が並んでいたのだが、同じ装丁で同時期に出たものと思われるのに、どういうわけかこれだけ高値が付いていた。まあ詮索はよそう。

 最後に国道6号を北上し、80キロ先の水戸市へ向かった。けっこう茨城県は南北に長い。このへんはまさに関東平野を思わせる穀倉地帯。稲穂が順調に成長している様を窓越しに眺めながら車はひた走った。水戸市に着いた時には夕方の5時を回っていた。新古書店を2ヵ所ほどはしごして帰ることにした。ここではほとんど収穫は無かった。まあこんな時もあるさ、とコンビニに寄って黒ビールと落花生、イカの燻製を買った。運転の友人には悪いが、助手席の私はアルコールはOKなのだ。ほろ酔い加減の私は原発問題や古本屋事情、ファストフード問題など今日一日を総括した。相方はハンドルを握って黙々と帰路を急いでいた。

 夏場は山行をひかえているので、当分古本屋巡りが続きそうだ。次回は埼玉の古本市に出かける予定。