鶏鳴山を登る

 




 
 
 日光山の前衛、鶏鳴山(961メートル)に登った。栃木県の南西、日光市長畑・小来川に位置するこの山は、屏風のようにそびえ、麓の集落を見下ろしているかのようだ。落葉期には男体山や女峰山などの日光連山、前日光の景観が楽しめるが、今回の山行は梅雨の真っただ中。展望は望むべくもなかったが、可憐な山野草が登山の疲れを癒してくれた。

 鶏鳴山登山口の案内板や登山道の取りつきなどがやや分かりづらかったが、至れり尽くせりの案内板・標識よりもこれくらいのつつましさが、かえって登山の緊張感を保てるような気もした。自然の中では人工物はできれば抑えたいものだ。

 スギ・ヒノキの人工林の中を進むと、所々にコナラ、モミ、カエデ類などの広葉樹林帯が点在している。そんなところには、消化しきれずに排出された木の実を多く含んだテンやタヌキなどの小動物のフンが散見された。スギ・ヒノキの人工林内にもイヌより少し大きめのイノシシのフンが点在していた。

 イノシシの分布は、近年に顕著になってきたもので、群馬県桐生市、栃木県足利市方面から分布域を拡大しながら、北上していったものとみられている。栃木県では奥日光の高山帯あたりまでイノシシが分布しているという。

 一方、登山道では可憐な山野草もみられた。スケルトンタイプのギンリョウソウ、大きな葉と小粒なオレンジ色の実をつけるモミジイチゴ、細かい白い花をぎっしりつけるコアジサイ、山岳部ではけっこうレアなヤマジノタツナミソウなどを見ることができた。

 鶏鳴山は、頂上まではアップダウンはあるが危険なところはほとんど無い。頂上から南へ向かう下山路は痩せ尾根が続き岩場や急傾斜地があるが、比較的歩きやすいコースといえる。総じて標識類が少ないので分岐の尾根ではある程度はルート・ファインディングが必要だ。ベスト・シーズンは秋口から冬場が良さそうだ。