キジバトのヒナが孵る
ナシの木に巣がかかっているのを発見し、親鳥の留守を見計らって中を覗くと、ニワトリの卵よりひとまわりぐらい小さい真っ白な卵が2個産み落とされていた。翌日の朝、なんと卵からヒナが孵っていた。体長8センチ余り。目はまだ開かず、全身がまばらな黄色い毛で覆われていた。黒いくちばしを閉じたまま鳴き声ひとつ立てない。カラスやイタチなどの外敵に襲われないための本能なのだろうか? とにかくじっとしている。それにしても、卵を発見した次の日にヒナが孵るなんてとても驚いた。こんな巡り合わせは二度とないような気がした。
キジバトは、体長33センチの中型のハト類。全体に淡い紫褐色で首の縞と羽縁の鱗模様が特徴。留鳥・漂鳥として平地から山地の明るい林などに広く生息する。現在では都市部でも見られる。キジバトの鳴き声を言葉で言い表わすのはなかなか難しいが、図鑑などでは「デデッポッポー」と聞きなしている。でも、どうもこれには違和感を感じる。私には「デェー デェーッ ポッポゥーー」と聴こえるのだ。鳴き声にも地域性や個体差があるというが、私が住む地方のキジバトはこのような音声と抑揚をつけて鳴いていると思われる。
キジバトの名前の由来は、毛羽がキジのメスに似ているからといわれている。平安時代からヤマバトの名で知られ、室町時代にはツチクレバトとも呼ばれていた。これらの古名のほかにアズキバト、トシヨリコイ、ノバト、フタコエドリ、マバト、ヨソウジバトなどの異名がある。
さて、半月後、孵化した2羽のキジバトのヒナは、親鳥の懸命の給餌でぐんぐんと成長し、毛も生えそろって無事に巣立っていった。ペアが巣を構えて卵を産んでから抱卵―孵化―巣立ちまでにほぼ1か月。いやはや野生動物はたくましい。