多気山に登る

 4月27日。快晴。久しぶりに里山に出かけた。宇都宮市大谷町の多気山(377m)。山頂はほとんど展望が利かなかったが、頂上部の御殿平では、ややガスってはいたものの西北に鹿沼方面の山々が霞んで見えた。ここは土塁や堀で囲まれた平坦地。戦国時代の山城、多気城(康平6年、藤原宗円築城)本丸跡が往時をしのばせ、やや盛りを過ぎたヤマツツジ群が新緑の山に彩りを添えていた。

 午前8時。国道293を折れて鳥居をくぐり、サクラ並木の参道を車で登った。市営駐車場に車を置くと、早速メジロの複雑なさえずり声が至近距離から聞こえてきた。多気不動尊の持宝院あたりでは「ビイビイビイー」とやや金属音のヤマガラを確認。サクラの樹上ではスズメ大のキツツキ、コゲラが盛んに餌を捜して幹を伝うのが見られた。道端で可憐な草花をカメラに収めながら階段状のハイキングコースを登り50分ぐらいで御殿平に着いた。途中、3種類ぐらいの夏鳥らしき声を聞き分けたが、種の同定には至らなかった。この日は他にホオジロカワラヒワ、ヤマバト、ヒヨドリシジュウカラなどの野鳥を確認した。

 御殿平で妙齢の女性ハイカーとばったり。「こんにちは」と互いに声を掛け合って通り過ぎたが、そのいで立ちが何ともしっくりこない。山岳雑誌の広告に載っているような、いかにも「山ガール」といった感じだ。しかもお一人様で。まあこっちも一人だったのでお互い様だが、どうも場違いなスタイルのような気がした。こんな低山にもっともらしく正札がまだ付いていて体にうまくなじまないような格好でやってくるとは、いやはや言わずもがなか。周りの景色を楽しむでもなく、そくさくと持宝院方面へ行ってしまったのには恐れ入った。何を考えているのやら。

 山頂をめざして迂回するとヤマツツジの脇になんと立派な「う○○」が鎮座しているではないか。風雨にさらされて膨張したのか直径5cm、長さ15cmのが一本半。かなり立派なモノだ。臀部を拭った化学繊維系のティッシュが生々しかった。300mクラスの低山ではこの汚物を分解する土壌生物などはいないのだろうか? 褐色の物体はほとんど原形を崩さずに自然を汚すオブジェのようにひっそりと佇んでいた。なんともみっともなく情けない有様と思うのは私だけだろうか…。

 山頂は7m四方の平坦地。鬱蒼と広葉樹や針葉樹が生い茂っていて見晴らしは望めなかった。三角点が打ってあり、スギの木に山頂を示す札と、だれが決めたのか「栃木百名山 90座」のプレートがかかっていた。

 下山ルートは、森林公園方面に下る道を進んだ。けっこう急勾配。所々にタラノキコシアブラが新芽を出していた。放射能汚染のこともあり、ここは眺めるだけにとどめておいた。約10分で林道西多気線に出た。これを右に折れてしばらく行くと持宝院の裏手に出た。その先にようやく駐車場が見えてきた。

 下りには、三カ所に木製の標識が設置されていたが、そこには地元の商店や飲食店などの名前も大きく記されていた。人里に近い俗化した山とはいえ、こんな所で里の臭いはそぐわない。できればきれいに消してほしいものだ。里山ハイクのマナーは薄れつつあるようだ。

 携帯附属の万歩計によると、歩行距離3.2km(5022歩)、消費カロリー189KCal(脂肪燃焼量13g)。写真を撮りながらのんびり3時間のコースだった。